知の創造

Haruka OSAKI's Blog

2週間で学振申請書を仕上げた話

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数人から「DC1の申請書見せてください」*1と言われたのだが、実はこの申請書、作成にかけられた時間は約2週間ほど。おかげでほとんど大慌ての突貫工事のような作業の嵐を経験した。

それでも採用されたということは、時間がなくても要点を押さえて頑張れば採用される申請書が書けるということなのだと思う。時間をかければいい申請書が書けるということでもないのだろう。

 

申請書の書き方についてはネットに多くの記事や資料がある。本も出版されている。

なので1度しか申請書を書いたことのない自分が改めて言えることなんてないだろうと思っていたのだが、2週間でしかも初めての学振申請書を書いた人はなかなかいないんじゃないか、と。

 

「もし時間がなかったときには何をすればよいのか?」

「まだ時間はあるけど、どういうポイントを押さえるとよいのか?」

 

と悩んだ際の参考にしていただければと思う。

 

 

スケジュール

大学の締切はGW明けすぐであった。

しかし、自分はGW直前まで沖縄調査を2週間予定していた。

とりあえず調査前に自分なりに申請書を埋めみたので、それを指導教員に送ってから調査に行った。「まあ、調査中に返事が来るだろう」

が、しかし。

 

締切14日前(調査直後)

指導教員からの返事がなく、焦る*2。申請書はとりあえず書いただけの状態。即刻、指導教員にミーティングをしてもらうと同時に、ひとまず研究室の他の教員をはじめ身近で科研費を獲っている教員に添削をお願いした(5人くらい)。

 

締切7日前(GW突入)

添削をお願いした方々から返事をもらい、第1回の修正が完了。GW中でも添削すると言ってくださった方に再度修正版を送るとともに、新たに8人の教員・研究者に添削をお願いする。

 

締切2日前

修正版を送った方々から返事をもらい、第2回の修正が完了(この間5日間約10名分のコメントを相手取っての修正の嵐は過酷だった)。ここで、完全に研究の門外漢である両親に読んでもらい、内容を理解できる申請書になているか確認。最後に自己PRページも含めたものを、これまで特に細かくコメントをくれた方々にもう一度全体を通して見てもらう。

 

締切1日前

指導教員と誤字脱字チェック

 

締切当日

提出!

 

 

気をつけたこと

1 ページ目にとにかく気合を入れる

「1ページ目でその申請書を読む気にさせる必要があります。」

というコメントをもらい、とても納得した。採点者の先生も人間だから、つまらなそうな申請書よりは図解などがあって目を引く申請書の方が読みやすいだろう。

自分の研究の概念図のようなものを載せられるとベストだ。

自分は自筆のクチキゴキブリの点描画*3を1ページ目の冒頭にデカデカと入れることにより、これを実行した。

 

できるだけ多くの人に添削してもらう

「見せたら見せた分だけいい申請書になる」

と言われたことを愚直に実行。ただ、コメントを反映できなければいくら見てもらっても意味がないので、コメントを捌ける限界を見計らって自分のキャパぎりぎりまでお願いする人数を増やした。最終的には14人の方々に添削してもらうことができた。

 

誰に添削をお願いしたか

お願いする人の基準は科研費・学振を獲っている研究者かどうか」

通る申請書にするために添削をお願いするのだから妥当な基準だろう。

自分は前年から学会などで会った方々に「学振申請書書いたときは添削お願いします」と予約を入れていた。特に過去の申請書をもらうときは、ついでに添削も予約しておくとよい。

そして申請書を書きながら、お願いしたい順に名前を書き出した。予約を入れてなくても思い当たる人がいれば書いておいた。知り合いであればいきなりメールで依頼してもよっぽどでなければ引き受けてくれると思う。

確か自分の場合、書き出した人数は20人を超えていたのではないだろうか。

このとき、学内の分野の違う教員も候補に入れておくとよい。これについては後述。

 

添削をお願いする順番

上で「お願いしたい順に名前を書き出す」と書いたが、具体的にどう順番を付けたかというと、

 

1. 予約時に「ぜひ見せてね」と意欲的に言ってくれた教員

「添削してください」とお願いしたときに、「いいよ」ではなく「見せて・見ます」と言ってくれる人は少ない。この方たちに真っ先に見せるべき。こういう方々ははコメントも本当に丁寧に返してくださる。時間がなくてもこの方々には繰り返し修正版を送り、何度も意見をもらった。

 

2. 同分野で自分の研究をよく知ってくれている教員

学会でいつもお世話になっている教員が何人かいるはずだ。こちらの研究について理解があるので、研究の意義や研究の独創的な点などについて的確なコメントをもらえた。

 

3. 書類審査セットに含まれる、自分とは専門が違う分野の教員

学内の他の研究室の教員がこれに当たる。

自分が申請した平成31年度採用分(わ、平成最後の採用だ)から書類審査セットが変更されて、例えば生態の分野で申請した場合でも、分類学、発生学、人間工学(?うろ覚え失礼)などの異分野の教員に申請書を採点されるシステムになった。分野外の人間にも分かるような申請書にしなければ読んでもらえない。

ということで、1, 2 で同分野の教員に見せ、ある程度分野内の人間が理解できる申請書になったら分野外の教員に見てもらった(普段から挨拶などしておくとこういうときに頼ることができる)。もちろん依頼したときは驚かれたが、添削してくれなかった人はいなかった。

的はずれな意見はあまりこない。むしろ「そういう視点で見られるのか」と大変勉強になるので、図々しいと思ってもお願いしてみるのをおすすめする。「申請書を読ませてくれてありがとう」と言ってくれる教員もいたくらいだ。

自分が送ったのは植物生理、遺伝、発生・機能などの教員だった。このチョイスに特に意味はなく、普段から面識のある教員の分野がたまたまこうだったというだけである。あしからず。

 

4.完全なる門外漢

自分は両親に読んでもらった(親に自分が何をやっているか分かってもらういい機会だとも思って)。これで内容を理解してもらえたら、まずまずの完成度なのかなと思う。

 

今回、自分は時間がなくて見せられなかったが、申請書をくれた先輩や研究室の後輩にも余裕があれば見せるとよいかもしれない。

 

最初の添削(締切14日前に依頼)のとき

自分の場合、時間がなかったので、一人から返事をもらったら次の人に送るなんてやっていたら十分に人数を得られないと分かっていた。このため何人かに一気に添削をお願いし(メールは個別)、返事がもらえたら順次修正するという方法をとった。

最初の添削(締切14日前)は順番どおり、「ぜひ見せて」と言ってくれた教員と自分の分野である生態学と近い分野の研究者にお願いした。内容の核となる部分を固めるためである。

この段階でたくさんの人にコメントをもらってしまうと、内容がぐらついているぶん方向性の違うコメントが来て収集がつかなくなるかもと思ったので、最初は5人に送るに留めた。5人というのは、お願いする順番でいうと 1.+ 2.の一部(研究室の他の教員など)と合わせたら5人だったというだけなので、時と場合によって変わるだろう。

「ぜひ見せて」と言ってくださっていた方々から、このときに本当に丁寧に指導をしてもらえたので、申請書がガシャンガシャンと組み直されて各要素があるべき箇所に配置されていくような感覚を得た。このおかげでいいたたき台ができていたのではないかと思う。最初に「ぜひ見せて」さんに見せるのはかなり重要。

 

2回目の添削(締切7日前に依頼)のとき

 GWに突入してしまった。にもかかわらず休日でもメールを返してくれる方がほとんどで、本当にありがたかった。

お願い順 2.+3. の教員合計8名とGWでもメールしていいよと言ってくれた「ぜひ見せて」さんに修正版を送った。2. にはもう少し候補がいたのだが、翌日から以下のような添削の嵐に見舞われ、「一度に8人くらいが限界だった…」と思うに至った。

同じ箇所について複数の教員からコメントが来た場合、それらが相反している場合がある。これらが同じタイミングで来たコメントであれば気づきやすいのだが、2, 3日ずれで来た場合、以前直した箇所を気づかずに新しいコメントに従ってもとに戻す、という事態に陥る可能性がある。対策として申請書を印刷して複数の教員からもらったコメントを全部書き込んでいくという方法や、修正箇所はそのコメントをくれた教員ごとに文字色を変えておく方法、また、wordファイルの名前に修正のバージョン数と教員の名前を書いておくという方法もある。ただ、どれも一長一短なので、私は自分の記憶に頼った。

結局、自分が納得する修正だけを反映させればいいのだから。

 

3回目の添削(締切2日前に依頼)のとき

「申請書には一貫性が大事です。申請書全体で自分をプロデュースすると思ってください。」

これまでは添削依頼の際に業績リストと自己PRページを省いて送っていたのだが、最後のPRまでが申請書である。なので、「ぜひ見せて」の方々に最後にもう一回、すべてのページを送って一貫性を見てもらった。

 

誤字脱字チェック

誤字や脱字があると、採点者から「やる気ないのかな」ととられかねない。こういう細部のチェックは、本質的な問題ではないが、意外と重要だったりする。

「音読すると、誤字脱字が一発で分かります。また、アナウンサーのように音読してみることで言いにくい箇所が分かりつまりはそれが伝わりにくい箇所です」

ということで文章の部分をすべて音読した。本当に誤字脱字が一発で分かるので、絶対にやったほうがいい。これで完璧と思っていたのだが、ともにチェックをしていた指導教員が業績リストに脱字を発見。リストは文章ではないので音読していなかった。リストも図も含めたすべての音読をオススメ致します。

 

戦い終えて

 以上、提出締め切り前2週間の怒涛の申請書作成であった。

 

一言でまとめると、

「見極めて、頼れ」

だろうか。

 

最後に、

10月になって結果がわかったときには、Twitterでつぶやくよりもまず先に、添削してくれた人たちへ報告するのを忘れずに。

 

今回は直前準備の話に終始したが、前年までにいろいろ準備したものもあるので、それについてはいつか気が向いたら書こう(主に業績と人脈である)。

 

 

学振申請書作成の参考文献

スライド資料:学振特別研究員になるために

 

www.slideshare.net

一番有名な申請書作成の参考資料だと思う。

毎年更新されているので、今年からの変更点などもきちんとカバーしている。

 

 書籍:学振申請書の書き方とコツ

学振申請書の書き方とコツ

 

上のスライドの作成者が書いた本。採点者の立場に立ったらどんな申請書が見やすいか、というスタンスで書式などについて述べられている印象。

スライドよりもより細かに、またDCだけでなくPDなど他の申請についても書かれている。大学の図書館にあることも多いが、申請時期には貸出が殺到するので早めにゲットすると良いかも。

 

他にもネットにはたくさん情報が落ちているので、検索すればいくらでも出てくると思います。

 

 

*1:もし、私の申請書がほしいという方は自己紹介を添えてメールください。アドレスはプロフィールにあります。

*2:私の指導教員は学振申請書について昔から非常にドライであるらしい。しかし何でも手取り足取りでは学生がポスドクになったときに結局苦労する。それなら学生のうちに自分でやるようにさせる、という指導なのだとこれまの指導を総合して感じている。

*3:当サイトのヘッダー画像。全体図はギャラリー参照。